生成AIを使った生産現場の人的リソース活用を考える


私は普段、ITエンジニアの立場から生産現場の改善に関わっています。
特に機械加工の現場が多く、その規模は複数の工場を抱える企業から数名の家族で切り盛りしている町工場まで様々です。

規模は違えど共通して言えることは、加工現場では業務内容やノウハウだけでなく自分自身のスキルでさえも感覚だけで捉えていることが多いということです。
これは加工者に限らず、事務処理の担当者や、現場を指揮する管理者の場合も同様です。

感覚を可視化・数値化することで人的リソースの最適化を図るため、生成AIを使ってみたことの記録です。

なぜ可視化・数値化に至ったのか

感覚と事実のギャップ

現場の改善にあたって、まず現状を把握するための調査から開始します。
通常はヒアリングを通して業務フローを作っていくことが多いです。

このとき直面するのが、当人の感覚と事実のギャップの大きさです。
ここでいう事実とは「この工程ではどんな作業をしているか」ですが、動作単位までブレイクダウンした作業を調べる必要があります。
当人が1つと認識して行なっている作業工程は、実際は非常に多くの作業の集まりだからです。

一例を挙げます。
注文受付スタッフに「あなたはここでどういう作業を行なっているか内容をすべて教えてください」と質問して
「注文内容が正しいかチェックして、問題なければ受注しています」といった回答が返ってきたとします。

この「注文内容のチェック」がまるで1ステップの作業のように聞こえてしまいますが、実際は大変複雑です。
材料のチェックだけに絞っても、以下のような複数の判断をしています。
なお、これでもかなり簡略化して紹介しています。


事前チェック項目の1つでこれだけの判断が発生しているわけです。
現場でモノを作っている加工者は、完成までに極めて多くの判断を繰り返しながら作業をしています。

業務フロー作成の段階で、当人の認識する作業工程と第三者視点で見た事実に大きなギャップを感じることは珍しくありません。
これの何が問題かというと、1つだと認識されている作業はこれ以上改善の余地がないように思われてしまうことです。
感覚で捉えられている業務は、正しい現状把握を困難にし、改善を阻害する危険があります。
そうならないためにも、業務を自らの言葉で正しく把握しておくことは重要です。

言語化を活性化したい

このようなギャップは、事実より感覚を優先している現場で多く見られます。
これは業務を言語化する機会が少ないことが原因の一つと考えています。

あくまでも経験則ですが、自身のスキルを自発的に言葉で説明できる加工者はなかなかいません。
しかしスキルがないわけではなく、引き出せば出てくるのです。
「自分は(もしくは生産現場の誰が)・どんな仕事を・どういうレベルで・どのくらいこなせるか」を表現する機会がそもそもないために「お互いになんとなくわかっている」という感覚で業務を進めている印象があります。

残念ながらこのような感覚を、改善効果の数値目標や、根拠としての実績値に使うことはできません。
また、言語化されていない動作を具体的に改善することは困難です。
現場を正しく把握し改善を続けていくためにも、業務・ノウハウ・スキルをきちんと言語化していきたい、その機会を増やすことで感覚頼りの業務設計から抜け出したいと考えるようになりました。

その第一歩として、生産現場のスキルを可視化・数値化しようと思いました。

生成AIを活用する

とはいえ、現場の加工者一人一人に経験やスキルをヒアリングすることは現実的ではありません。
1度のヒアリングで対象者から十分な情報を引き出せたとしても、人数が多ければ多くの時間がかかります。
仮に何度も聞き直すことになれば業務の邪魔になりヒアリング自体に拒否反応が出るでしょう。
それに相手に応じた対応の変化も求められます。
かといって画一的なヒアリングシートを配布しても表面的な情報しか拾い上げられないと思います。

そこで、生成AIでエージェントを作ってヒアリングをしてもらうことにしました。
チャット形式で加工者のスキルや経験に応じて質問と内容を変え、回答を数値化していき結果をまとめます。
何度か繰り返しつかってもらい、その都度情報を深掘りしていくことを目指しているので「同じ質問の繰り返し」感が出ないように適宜会話を織り交ぜるようにします。

AIエージェントの目標

AIエージェントに設定する主な目標は以下の通りです。

  • スキルの見える化
  • 加工者スキルの数値化
  • スキルマップの作成
  • 繰り返し使用による情報の深掘り

利用場面

以下の場面で利用することを想定しています。

  • 加工者自身がスキルアップを目指すために現在のスキルの棚卸しをしたい時
  • 管理者が人員配置を最適化するために現場加工者のスキルを把握したい時
  • 加工経験者の採用にあたって、事前チェックしたい時

成果物

それぞれリンク先(GitHub)に格納しています。

AIエージェント

機械加工スキル・ヒアリングアシスタント

注意点

  • 現時点では検証段階である点にご注意ください
  • Claude用に作成しているため、「Claude」のテキストは適宜「ChatGPT」や「AIエージェント」などに置き換えてください
  • 現場の要望やフィードバックを受けて更新していく予定です

スキルマップ表示ツール

KousakuMapKousakuMap.html が本体です。
表示サンプル:サンプルデータを使った表示内容の確認ができます。

AIエージェントのヒアリング結果を集約し、ヒートマップ形式で表示します。
チーム全体、組織全体のスキル像を俯瞰するために使用します。
スキルはカテゴリごとにタブ区切りで表示されます。


まとめ

今回は現場改善活動の一環に生成AIを取り入れた事例を紹介しました。
現状把握を正しく行い、人的リソースを有効活用するための準備段階です。

生成AIを活用した改善活動は一般的になっていくだろうと予想しています。
設計図面や注文書を読み込ませて、加工する際の注意点の指摘、完成までにかかる時間の予想、適任者が誰か、適切な価格設定。
これらを現場でAIエージェントに聞きながら作業を進めることが当たり前になるかもしれません。

お問い合わせ

生成AIを使った改善活動についてはお問い合わせページよりお気軽にご相談ください。
題名を「生成AIによる改善活動」にしていただくようお願いします。

  • 生成AIでどんな改善ができるのか知りたい
  • 煩雑な事務作業を生成AIで自動化したい
  • 自社の生産現場に特化したAIエージェントを作成したい
    など